中小企業成長加速化補助金(最大5億円)に採択されるための戦略
~成功企業の数値から学ぶ採択のポイント~

中小企業診断士の武田です。
中小企業にとって、成長加速化補助金は事業拡大や設備投資を加速させる大きなチャンスです。今回の申請には、1,400社を超える公募があり(100億円宣言を提出した企業数の公開データより)、採択率は決して高くなく、多くの企業が挑戦しながらも選ばれません。
では、一次審査を突破し、採択を勝ち取るためには何を重視すべきでしょうか。ここでは、現在、9月下旬採択発表予定で審査が行われている「中小企業成長加速化補助金(第1次)」の最新の審査傾向や上位企業のデータをもとに、次回申請で採択されるための戦略を整理します。
1. 審査の流れを理解することが第一歩
近年の補助金審査は、売上成長率や利益率など「数値計画」に基づくスコアリングが重視される傾向があります。[TM1]
成長加速化補助金では、フリーフォームの事業計画書に加え、売上高や営業利益、人件費などの数値計画を直接システムに入力する形式が採用され、AIなどによる初期スクリーニングが行われていると考えられます。
実際、今回の一次公募では次のような要因から「足切り審査」が行われた可能性が高いと推測されます。
○「足切り審査」が行われていると推測する根拠
①PDF形式のフリーフォーム事業計画書提出から、システム直接入力形式に変更[TM2]
→ 審査員による審査の前にAIやシステムで計数審査が可能になった
②入力修正依頼完了から採択(非採択通知)までが約1週間
今回事務局から申請者への形式的な修正依頼が数回ありました。最終修正依頼から、採択通知までわずか1週間である。
→ 1,400件以上の計画書を人が精査、横の調整をするには不採択の連絡が来るまでの期間が短すぎる
③面接審査が8月下旬以降に設定
書類審査の採択通知(7月15日頃)から、2次面談審査(8月下旬)まで約40日。
→ 早期段階で通過候補を絞り込み、面接用に計画書を精査する時間を確保していると考えられる
これらを踏まえると、「文章の説得力」よりも前に「数値計画の水準」が審査通過の前提条件になっている可能性が高いと言えます。
2. 採択のカギとなる4つの指標
事務局の評価基準を見ると、次の4項目が特に重視されます。
○売上高成長率
補助事業期間終了後3年間の売上高の伸び率
○付加価値増加率
売上だけでなく利益や労働生産性の向上を示す指標
○賃上げ率
投資によって得た利益を従業員還元できるか、またその伸び率は、どの程度か。
○売上高投資比率
売上規模に対してどの程度の投資を行うか
この中で、採択を狙う上で特に重要なのは「売上高成長率」と「売上高投資比率」です。この2つは連動しており、成長計画を大きく描き、かつ相応の投資を行う姿勢が求められます。
3. 上位企業の数値から目標を逆算する
本補助金の申請要件である「100億円宣言」企業(公開データ)の上位1/3に入る3年間の売上高成長率は**169%**でした。
また、売上高投資比率については、売上50億円規模の企業で総投資額7.5億円以上が一つの目安と考えられます。
実際、採択企業は補助上限5億円(補助率1/2)を活用し、総投資額7.7~10億円規模の計画を提示しているケースが多いと推測されます。

4. 採択に近づくための数値設定例
仮に売上50億円規模の企業で申請する場合、次のような数値が目安になります。
○売上高成長率:3年間で+69%以上(例:50億円→84.5億円)
○総投資額:7.5億円以上(うち補助金活用5億円程度)
○付加価値増加率:成長率と連動して大幅改善
○賃上げ率:最低賃金上昇率(2025年改訂は年率6%のため、法定水準を上回る3年間で20%程度の総額人件費の向上)
ここで重要なのは、単に数字を大きくするだけでなく、異次元の成長の根拠と実現性を裏付ける戦略を用意することです。
5. 数値を裏付ける戦略づくり
数字を裏付ける戦略作りの方向性として、以下のようなプランを実現可能性(具体的な戦術)を示しながら、事業計画を整理していきます。
5-1. 成長率を高めるには
新規市場・新業態への進出
高付加価値製品の拡販
海外展開やオンライン販路の開拓
5-2. 投資規模を確保するには
設備更新だけでなくIT導入や研究開発を含めて総額を構築
複数年度にわたる投資計画を提示
補助金の活用割合を最大化
6. 採択に向けた行動ステップ
○ベンチマーク調査
「100億円宣言」Webページは採択情報の宝庫です。10社、20社と読み進めるうち、採択されそうな事業計画の共通点が徐々に見えてくるはずです。
「100億円宣言」などの公開情報から上位企業の数値水準を把握します。
また、100億円宣言について、帝国データバンクが興味深い分析レポートを発表されているのでこちらも参照してください。
○100億円宣言Webサイト
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies
○帝国データバンク 「100億宣言」企業の分析調査
https://www.tdb.co.jp/report/economic/100okusengen100okusengen
○数値シミュレーション
成長率・投資額を複数パターンで試算しましょう。売上成長を高めると、収益は上がりますが人件費も上げないと、労働分配率が下がるなど、非常に複雑な計数構成になっています。
○早期の専門家関与
補助金申請の経験が豊富なコンサルや診断士を初期段階で招き、しっかりとコミュニケーションを取り、戦略を検討しましょう。私の経験上、遅くとも、申請締め切りの2カ月前には、支援者との契約が必要です。
○根拠資料の準備
受注見込み、設備見積、用地の契約などを揃えて説得力を高めましょう。
まとめ
成長加速化補助金で採択されるためには、文章の説得力だけでなく、数値計画の水準を上位企業並みに引き上げることが不可欠です。
特に「売上高成長率」と「売上高投資比率」は、足切り審査を突破するための最重要指標と言えます。
今後の申請では、目標数値を逆算し、成長戦略と投資計画を緻密に設計しましょう。根拠ある高い目標を掲げることで、採択への道が大きく開けます。
三浦湘南操業ネットワークでは補助金に関する無料電話相談をお受けしています。補助金申請をご検討の方は、お気軽にお電話ください。
担当:武田 潔(中小企業診断士)
電話番号:090-4526-9460
