クリーンエネルギー風力 その1

風力発電

 皆様、(一社)三浦湘南共創ネットワークの藤井です。当法人は三浦半島地区の事業者の皆様の共創活動をサポートしています。共創とは、いろんな事業者とその顧客、あるいは仕入先など立場の異なる人たちが集まって、新たなビジネスや社会活動を創造していくことです。皆様ご自身の事業の発展というだけでなく、今後は広く社会のためになることが価値を生み、ひいては皆様の事業の柱になるのではと思って活動しています。よろしくお願いいたします。

 さて今回は、再生可能エネルギー 特に風力発電について述べてみたいと思います。グリーントランスフォーメーション(GX)って、聞いたことがありますか? 簡単に言うと企業が脱炭素の環境戦略を展開することです。こうすることで消費者から共感を得、また投資家から資金を得やすくする意図もあります。GXを進めるに当たって、基礎知識としてご参考になればと思います。

洋上風力発電所
Middelgrunden洋上風力発電所  出典:Wikipedia デンマークの風力発電

洋上風力発電

 デンマークの首都、コペンハーゲンからスウェーデンのマルメという都市をつなぐ、列車があるのですが、この列車はエーレ海峡という国境の海をトンネルや橋で渡ります。

 これに乗ったときに、海上に多数の風車が整列しているのが見えました。私が見たのはもう10年以上も前、2009年のことです。今、Google Earthで調べてみると、実際の位置はコペンハーゲン沖の海上で、20基ほど並んでいます。ネットでもしばしば写真が掲載されていますし、世界的にも有名な洋上風力発電設備と言えるでしょう。

 このようにヨーロッパでは、既に2000年代からこのような風力発電が稼働していました。実際に2009年にデンマークで聞いたのは、個人や組合で風力発電機を自宅に立てて売電している例でした。投資です。そうなんです、既に自由化されていて勝手にやってもよかったんです。

日本における電力自由化

 日本でようやくこの状態(電力自由化開始)になったのは、2013年から14年頃です。日本でもFIT制度(Feed In Tarif:再生可能電力を市場より高く電力会社が買い取ることを国が保証する制度)が、ようやく実現して太陽光発電に投資する人が増え、太陽光発電が急速に増えました。家庭用で20年、大規模設備で10年間、最も高い時期には42円/kWh で買い取ってもらえました。市場価格は平均して27円ぐらいですから発電すればするだけ儲かったわけです。

再エネ賦課金

 FIT制度は、実は全国民の負担で成り立っている電力会社への補助金制度です。再エネ賦課金という名目で、電力を使う全国民から現在では1kWh当たり3円程度、すなわち消費税と同じ10%程度の賦課金が徴収されています。最初は1円ぐらいだったと思うのですが、今や3円。再エネの要求は政治的にも高まっていますから、この賦課金、今後ますます上がっていくでしょう。消費税上げにはあれほど敏感なのに、これの値上げについてはだれも何も言わないのはなぜなのかよくわからないのですが、一世帯で平均年間約4300KWhですから年にすると10,000円を超える負担を、再生可能エネルギーの支援のためにということで、しているわけです。当家でも最近、テレワークで私が自宅にいるせいで冷暖房の電気代がかさんで、月に500KWhとかにもなることがあるので、何とも痛い。早くもっと効率的な再生可能エネルギーが出来てくれないかと思うのですが。

再び風力発電

 さて本題の風力発電ですが、地熱発電や、潮力発電波力発電などと共に、地球のエネルギーを電力に変換するもので、環境負荷が最も少ない発電方式の1つです。日本では、大規模な風力発電は、青森県や三重県などで設置されていますが、すべて人里離れた場所です。人口稠密な日本では、騒音問題が避けられません。そうなんです、風車って相当うるさいらしいんです。

 だから海上立地がいいのですが、デンマークのように遠浅の海でかつ一定の風が吹く場所が日本には少ないこと、適切な場所については漁業権の問題などで設置が許されず、現在、海上風力発電の設置は少ないままです。世界でも屈指の海洋領土を持つ日本ですので、是非そんな状況を打破して海上風力発電を強化してほしい。わが町、葉山にも風力をと思うのですが、陸上はもう場所がありません。三ヶ岡の山にでも立てようかというところですが、そもそも建設機材を運ぶ道から整備しないといけないし、広い場所もありません。しかも景観もきになりますよね。

 というわけで、日本では、やはり「洋上」が脚光を浴びます。実はようやく日本でも、洋上風力のための法整備がなされ、2016年の改正港湾法と、2019年の再エネ海域利用法(海洋再生可能エネルギー発電設備の利用促進に関する法律)ができて、今まで海上風力を建てようにも話をする場がなかったのが、新たに漁業者、地元住民の方と話をする場を設けることができるようになったのです。

洋上風力発電の方式

ここで、洋上風力発電の種類(設置方法の分類)をご紹介いたします。

着床式洋上風力発電
図1、着床式
浮体式洋上風力発電
 図2、浮体式

    ※図1,図2共 筆者作成

 ヨーロッパのように、浅海に設置ができる場合は、図1の着床式が、深い海に設置する場合、設置コストから図2の浮体式が選ばれます。深い海に囲まれた日本では、どうしても浮体式が有効となる場合が多くなります。逗子湾、葉山沖までは20m以内と浅いのですが、相模湾でも江の島沖あたりまで行くと100mを超えます。三浦半島、湘南の海岸近くはやはり観光資源ですから、設置もしにくいと思いますので、浮体式でかなり沖のほうに設置することになることでしょう。浮体式は、台風や大波が来ても、起き上がりこぼしの要領で倒れてしまうことがありません。船のようにドックで製造し、曳航して設置するために喫水が浅くフロートが広いものもあります。これだと、海面下の部分を工夫すればちょっとした漁礁になって漁業に役立つ可能性もあります。

 実は、先に述べたFIT制度による電力買い取り額は、風力発電については以前から19円/kWh程度と低いままでしたが、近年洋上風力の別枠が設定されて、2021年は、着床式で32円、浮体式で36円/kWhとなっています。私たちの負担金なので、ウォッチしていない方にとっては、いつの間に!という思いもあるかもしれませんが、国策として洋上風力発電を支える形にようやくなったわけです。ちなみに2021年現在の家庭用太陽光の買い取り価格(新に設置した場合)は19円/kWhです。

相模湾で洋上風力はどうだろう

 近い将来、相模湾沖にたくさんの風車が浮かぶ光景を、皆さんはどうお考えになるでしょう? 海の環境、漁業や景観にも悪影響を及ぼしてはいけないので、慎重な環境アセスメントと、沿岸住民、観光業や漁業者の皆様のご理解が必要ですが、大きな船が運航しない相模湾は、安全に設置できるという意味でもいい立地だと思います。CO2増加による環境破壊(温暖化や海面上昇による漁業や観光への被害)は取り返しがつきません。脱炭素を標榜する限り、火力発電を今後も放置するわけにはいきませんよね。原子力も東日本大震災以来、日本では増やすわけにいかない状況です。再生可能エネルギーの1つとして洋上風力は大きな価値があると考えます。

 お読みいただいてありがとうございます。脱炭素の未来は実現しなければなりません。みんなで何か協力できないものか、考えてみるきっかけになればと思います。次回は、続編で風力発電の課題と対策について書いてみたいと思います。乞うご期待。

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