共感が求められる時代の新しい資金調達クラウドファンディング Ⅰ.トレンド
2022年3月7日
増田竜雄
中小企業診断士
第1回目は、クラウドファンディング(以下、CF)のトレンドについてお伝えします。CFは、「共感」が求められる今の時代に、ビジネスの新しいビジネスの入り口になっていると考えるからです。
⑴市場規模の推移
矢野経済研究所の調査(図1、図2)では、2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大の救済・支援の新プロジェクトが数多く立ち上がり、1,841億円となっています。そして、CFを寄付型、購入型、融資型、不動産型、投資型、株式型の6つに類型化した時、規模が大きいのは融資型ですが、近年大きく伸長しているのが購入型になります。
融資型は、投資家がCF事業者を通して投資をして、リターンを金銭で受け取る、資産運用ができる金融商品と言えます。一方、支援者がリターンとして物やサービスを受け取れるのが購入型となります。
⑵CFはメディアなのか?
購入型が増加しているということは、「大衆からお金を募る」資金調達という財務面の目的に加えて、マーケティング的な目的で使われることがますます増えるためと言われています。つまり、新製品のテストマーケティングや発売時のプロモーション策、さらに、ブランディング向上策として使われていくということです。
それは、高度経済成長期にテレビCMが「買うものを知る」メディアの地位を確立して、その後、SNS等インターネットメディアに移行してマーケティングのすそ野が広がったように、企業規模の大小関係なく、資金調達は銀行借入だけでなく、CFがその舞台になっていくことを示唆しています。
それも単に「買うものを知る」メディアではなく、生活者が自分達の考えにつながるものを支持する「意見を発する」メディアになりつつあることを表しています。
⑶「意見を発する」メディアとして
マズローの第6の法則(図3)とは、「欲求五階層説」で有名なマズローが、晩年にもう一つ上の階層を提唱しました。それが第6の欲求「自己超越」です。
五段階までの欲求は全て自分のための欲求でした。対して「自己超越」での欲求は自分ではない誰かのためへの欲求です。そして、それを成し遂げた時に得られる物こそが自己実現の本質だということです。「他者への貢献」とも言えます。
共感が求められている時代に「他者への貢献」は、人と人とのつながりを深めるだけでなく社会を変えるメッセージにもなります。その最も大きい他者、つまり地球への貢献を後押しするSDGsやESG、ひいては社会的課題の解決に取り組む事業者への支持を、生活者である私たち一人一人が、資金調達を通して意見を表明する場として、大きな役割をも担っていると考えています。
第1回目は「CFのトレンド」についてまとめました。次回は、「CFの本質」について整理してみます。